2012年02月29日

「引き算の美学」で生きる


先週は、久々の僕の新刊が発売されたのですが、

この本を読んで下さった方たちから、
早くもご感想の言葉が届き始めています。



志望校に合格できなくて落胆していた受験生の方や、
失恋の痛みからなかなか立ち直れないでいた方や、
ある事情で職を失い、将来への希望を見出せないでいた方。

そういった状況の方たちからも、

「この本に出会えてよかった」
「心の支えになりそうです」
「自分の人生に起きた出来事を、まったく別の視点から見る
ことができました」

などのメッセージをいただき、
著者として、自分の拙い著作がお役にたっていることの喜び
を感じております。



子育てをされている方からの、

「子どもの人生を所有しようとしていた自分に気づけました。
執着を手放すための考え方がわかりました」

というご感想には、
僕も一人の親として、心から共感しました。



また、「病気」や「老い」に直面されている方たちからも、

「自分の状況を受け入れる勇気を得ました」、
「自分の人生を生きていく覚悟が定まりました」 など、

心から敬意を表したくなるような感動的なお言葉をいただき、
著者冥利に尽きる思いです。





ただ、この本は、
たくさんの方が書店やインターネット書店で予約して下さった
おかげで、

在庫切れになってしまうケースが多くあったようです(^^;

発売前に重版が決まったのですが、
その増刷分が間に合わなかったのです。



ですが、ようやく増刷分も配本され、
書店やインターネット書店に並びはじめたようです^^

人生は「引き算」で輝く 本当の自分に目覚める話
人生は「引き算」で輝く 本当の自分に目覚める話




なお、この本では、

メインとなる物語に加えて、

「引き算の美学、そして永遠に失われないもの」 という題の
12ページ分のあとがきを、僕が書いております。


これは、
僕が最も大切にしている人生哲学を公開したものです。

どんな内容なのかチラッと読んでみたい方は、
書店に立ち寄って、手に取ってみられてはいかがでしょう^^



あと今回の記事で、

本の中で語ったこととは少し違う角度から、
「引き算の美学」についてお話してみたいと思います。



余計なものを思いきって引き算していくことで、
本当に重要なことを浮かび上がらせる。

これが、「引き算の美学」です。



東洋思想の大家でいらっしゃる安岡正篤先生は、

「枝葉を捨てて根本を把握するのが東洋の文化の美しさである」
とおっしゃっています。



それはたとえば、日本の詩歌にも見られます。

和歌(短歌)は31文字。
そして、世界で最も短い詩形である俳句は17文字ですね。

このわずかな文字の中に、自分の想いやメッセージを込めるのですから、
本当に大切な言葉以外は、思いきって切り捨てていく必要があります。

こうして、最も大切なことが明確になり、
最も重要なエッセンスだけが表現されるのです。



『俳句脳』という本の中で、
茂木健一郎さんが、次のようにおっしゃっています。

「無自覚なままに言語を書き連ねる文化より、
単語を削ぎ落とし削ぎ落とし、原理を考察する文化の方が、
大らかな生命の力に近づける気がする」

「限られた文字の背後に限られない世界を探ることは、
限られていない自分を感じることでもある」



また、安岡先生は、
ご著書『人生、道を求め徳を愛する生き方』 の中で、
以下の話(広瀬淡窓の話)を紹介しておられます。

--------------------------------------------

ある俳人の弟子が、

「板の間に 下女 取り落とす 海鼠(なまこ)かな」

という俳句を作って見せたら、
先生は、「道具建(=ムダ)が多い」といって却下した。

そこで弟子はよく考えて、

「板の間に 取り落としたる 海鼠(なまこ)かな」

と、下女を省いた。
すると先生は、「これはよくできたが、まだいかぬ」
と言った。

さらに弟子は苦心した後、次の句を作った。

「取り落とし 取り落としたる 海鼠(なまこ)かな」

それを聞いて先生は手を打って、
「それが句作の真精神である」 と褒めた。

--------------------------------------------



余計なものを手放していく過程で、
本当に大切なものが鮮明になってくるわけですね。

この弟子にとって、最も表現したかったのは、
下女でも板の間でもなく、海鼠だったのです。

海鼠を取り落とした感じを、表現したかったわけです。



安岡先生は、こう説明されています。

「説明が多いと、本質が見えなくなる」
「枝葉を捨てていくことで、根本が明確になる。
余計なものを去っていくことによって、物の性命が露わになってくる」



引き算をすればするほど、本質的なものが輝いてくるということですね。



「引き算の美学」を実践していくということは、

「最も大切なことを最も大切にしていく」 ということであり、
「最も重要なことに集中する」 ということでもあり、
「自らの価値観にそった生き方をする」 ということでもあるわけです。



あらためて、自分を振り返ってみたいものです(^^



人生は「引き算」で輝く 本当の自分に目覚める話
人生は「引き算」で輝く 本当の自分に目覚める話




procoach at 19:35│Comments(9)clip!

この記事へのコメント

1. Posted by フェルメール   2012年02月29日 23:44
5 お久しぶりです。野口コーチ。

人生は引き算というのは様々な方が言われていますよね。

通な生き方なのかな、と感じています。

自分も足し算の人生を卒業して、
そろそろ引き算の人生に変わろうとしています。

新刊を楽しみにしていたので、時間を作って必ず読みます。

引き算の次は、空=ゼロなる無限、でしょうか。

いま、エンジニアやってるので、ないといえばない、あるといえばある、の不思議な感じです。

3.11後、多くの日本人が正念場に立たされています。

自分もがんばります。

2. Posted by 山中一弘   2012年03月02日 13:44

>「板の間に 下女 取り落とす 海鼠(なまこ)かな」

これの何がいけないのかなーと思いましたが、


>「取り落とし 取り落としたる 海鼠(なまこ)かな」

という句を前にすると、
なるほどこっちがいいなあと納得しました。


自分の日々の生活でも、
「自分には何が足りないんだろう?」
ではなくて、
「自分には何か要らないんだろう?」
という引き算の発想で考えるのも面白いなと思いました。

どうもありがとうございます。
 

3. Posted by とまと   2012年03月10日 23:19
今日偶然に書店で手にとりました。

「足し算」で増えていく楽しみと
「引き算」で身軽にしていく潔さは、

「陽」と「陰」、
総じてはバランスがとれているのかなとも思いました。

半世紀生きて、
「今まで」と「これから」に
思いをめぐらせ始めたこの頃。

時々、静かに目を閉じて、
「本質」のなかに
喜びを見出していければと思います。

この本とは
意味のある出会いでした。

ありがとうございます。


twitterフォローさせていただきました☆





4. Posted by ゆかり   2012年03月11日 19:41
5 野口さん(゜∇゜)こんばんは 7年前ぐらいからの野口さんのファンです(^O^)

久々の野口さんの新刊でとてもうれしいです。 今日やっと本屋さんに行けたのですぐ購入しましたV(^-^)V 今夜から大事に読ませて頂きます

ちなみに…心眼力のDVDは定期的に見ていつも涙がでます(;∇;) やっと野口さんの本が出てくれたので、久しぶりに本を買いました(^O^)
5. Posted by shige   2012年03月13日 19:08
トコチャレ最終日

学友のみなさん、本当にありがとうございます。

野口さん、ありがとうございます。

皆さんのおかげで素晴らしい勉強ができました。

本当にありがとうございました。


6. Posted by リリィ♪   2012年03月13日 19:49
若輩ながら、
人生を振り返ると
特に意識しなくても
自動的に引き算の出来事が
起こるので、
何年周期か分からないのですが、
長期的に総括すると、
プラスマイナスゼロなのではないかと
感じています。
ありがとうございます。
7. Posted by 環境大学新聞   2012年03月16日 17:13
皇室や若宮ゆかりの大根焚と粕汁

昭和16年正月頃からラジオ放送を通て日本全土に古式道理の朗々たる葛野守様の歌詠や、長皇子と各・宮家や在日大使館代表などと駐在陸・海・空軍の武官を信濃守様や三河守様に愛宕守様など桃園親王家(本家)と源氏(分家)が招ての御子様.ご誕生の礼式や官位・勲章伝達式の様子が一挙生放送されたのを御存知ですか。
9. Posted by フクジョ   2012年05月05日 22:40
4 等身大の自分〜〜。
一番最初に心に浮かんだのは「嫌だ〜」でした。
しかしまた本を読み、野口さんのブログを読み、考えました。等身大の自分と生きることができれば、一番幸せではないか。
心を見つめて心がわくわくすることをしてみようと考えた。一瞬一瞬、自分は何に心が惹かれるか見つめてみようと思います。
11. Posted by 舘岡   2013年04月26日 10:43
引き算の美学と言う事はとても大切なことですね。
足し算の美学では本質が見えてこないですから。

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