2012年02月09日

人生の解決策はどこにある? 「自立&創造型」の生き方

僕は以前、講師として、
コーチングやコミュニケーションの研修を、企業に提供していた
ことがあります。

その研修の中のQ&Aコーナーで、
次のような質問をされる方が、意外に多くいらっしゃいました。



「私の部下のA君は、・・・で・・・で・・・な性格なんですが、
先日、彼がミスしたときに、私は『・・・・・』と注意しました。
すると、A君のモチベーションが下がってしまったんです。
そんなとき、どのように注意したらよかったのでしょう?」



こんな感じの質問をされる方が、
毎回の研修で、何人かいらっしゃるんですね(^^;

何か正解のようなものがあると思っておられるようです。



これは、
現代の日本人の傾向を表している質問でもあると思うんですが、

僕はそんなとき、

「人と人とのコミュニケーションには、正解もなければ、万能の
解決策もないと思うんです。
それとも、私が正解のようなものを知っていると思われますか?」

と質問することが多いです。
(もちろん、受容的な雰囲気で^^;)



すると、

「他人に訊くべきことではなかったですね。私自身が
自分で考え、見出すべきことですね」
とおっしゃる方もいれば、


中には、

「正解はないのかもしれませんが、お勧めの解決策くらいは
あるのではないですか?」
と食い下がってこられる方もいます(^^;



この後者のような方に対して、
僕は、解決策を差し上げることができるのでしょうか?



僕は、その方の部下であるA君と会ったことがありません。
つまり、A君の人柄も知らなければ、
A君の価値観や好みも知りません。

その方とA君の人間関係がどうなのかということも、
僕は、正確にはわかりません。

さらに僕は、
その方の職場でのキャラクターも知りませんし、
その職場の雰囲気も知りませんし、
その職場に、その方とA君以外にどんな人たちがいるのか
ということも知りません。


そして何よりも重要な、
「A君とこれからどんな関係を築いていきたいか」
というビジョンや意図を、僕は持っていません。



というわけで、

参考になりそうなスキルを一応はお教えしつつも、

「スキルで解決できることでは、ないかもしれませんよ」

と、お伝えします。



生身の人間どうしの“関係性”の問題を、
スキルやノウハウによって解決しようとする、その姿勢こそが、

おたがいのすれ違いや思い違いを
作っている根本的な原因なのかもしれないと思うんです。



やはり、コミュニケーションにおいて一番大切なのは、
スキルや技能やアイデアではなくて、
自分の“あり方”ですよね。



たとえば、ある課長さんが、
部下のB君との人間関係で悩んでいるとします。

「B君は指示したとおりに仕事をしてくれないし、自分は
B君から信頼されていないのではないか」
と悩んでいます。

そんなとき、
先輩に助言を求めたり、
セミナーに出てスキルを学んだり、
コミュニケーションの本を読んだりすることも、

もちろん大いにけっこうなことだと思いますが、

何よりも根本的に大切なのは、



その課長さんが、自ら、

B君と向き合い、
B君に心を開き、
B君と本音のコミュニケーションを交わして、

本気でB君を理解しようとすることではないでしょうか。

B君に全身で体当たりすることではないでしょうか。



B君との人間関係をよくするために、
どれだけ時間をかけて、自分で悩んだか?

B君とコミュニケーションを取るために、
どれだけ勇気をふるって体当たりしていったか?

B君との関係で悩むことによって、
自分が上司としてどれだけ成長しつつあるか?

こういった “あり方” の中から、
思いもしなかったヒントが見出され、
予期せぬ突破口が表れてくるんだと思うんです。



この最も重要なプロセスをおろそかにして、
安易にヒントや正解を求めてしまう人が、

特に日本人には多いようです。



お名前は忘れましたが、10年くらい前に、
ある大学教授が講演で次のようなことを仰っていました。

「私はかつて、ヨーロッパやアメリカの大学で学生たちに
教えたことがある。
その後、日本の大学で教えるようになったが、欧米の学
生と日本の学生の違いを知って、愕然とした。
欧米の学生は、私が講義で教えた内容に対しても、あと
でズバズバ反論してくる。
中には私の知らないこと(盲点)を突いてくるような鋭い
反論もあり、
『それは私にもわからない。私なりに考えてみるから宿
題にさせてもらいたい』などと答えると、
『僕も考えてみます』などと満足そうな顔をする。
ところが日本の学生の場合、『何々について、理解で
きないのですが、どう考えたらいいですか?』などと、
“答”を聞いてくるような質問ばかりだ。
『それは難しい問題だね。私も考えてみるから、君も
考えてみなさい』などと答えると、二度と来ない。
つまり、彼らが欲しているのは“答(=正解)”であって、
“問い(=考える題材)”ではない。
“答”を与えてくれない教授には用がないというわけだ。
彼らを見ていると、日本の将来が心配になってしまう」



だいたい以上のような内容だったと思います。



つまり、欧米の学生に“探求型”が多いのに対して、

日本の学生には、
「正解を教えて下さい」 という“依存型”が多いという
ことですね。



実際に日本では、小学生のころから、
「正解は一つ」 という前提の教育を受けますね。

子どもたちは、
正解を答えることができるかどうかで○×を付けられる。
つまり、“テスト”なるもので評価をされる。

そのため、
真面目に受験競争に取り組んだ子どもほど、
大人になるころにはガチガチに依存型の脳が
できあがってしまう可能性があるわけです。



かつて、塾か何かのテレビCMで、
次のようなことを言っていました。

---------------------------------------------

日本の学校では、

3+7=□ (□を埋めなさい)

という教育をするが、


イギリスなどヨーロッパでは、

□+□=10 (□を埋めなさい)

という教育をする。

---------------------------------------------



教育の問題の本質を突いた内容ですね。



3+7=□ (□を埋めなさい)   (=日本の教育)

この場合、答は何通りあるでしょう?



一つだけ(つまり “10”のみが正解)ですね。
それが日本の教育です。



では、ちょっと考えてみてほしいのですが、

□+□=10 (□を埋めなさい)   (=欧米の教育)

でしたら、答は何通りありますか?



何通りでしょうか?



そうです!

無限にありますよね。



たとえば・・・

1 と 9

−18 と 28

2.7 と 7.3

41/6(6分の41) と 19/6(6分の19)

50000 と −49990

等など。



無限にあるということは、
決まった答があるわけではない。ということ。

自分の好きな答を探求したくなるわけです。



しかし日本では、
「答を教えて下さい」 という依存型の人が多い。

そして依存型の人の傾向として、

明解なアドバイスを与えてくれる(=答を与えてくれる)人や
カリスマ的なリーダーなどを
師として好みます。



また、さらに依存傾向の強い人は、

“天才的な戦略家”や“常人離れした直感能力者”などを好み、
自分の人生の問題に対して、
安易に彼らのアドバイスに従うようになり、
「自らどこまでも悩み考え抜く」ということを放棄します。

ずいぶん怪しいカルト宗教などを、
多くのインテリ層や若者が妄信してしまうのも、
その背景に、
「答を与えてくれる人への依存」 があると思います。



田坂広志さんが、次のようなことを仰っています。

「真の知性(ウィズダム)とは、正解のない問いを一生かけて
問い続けていく力」



人生においては、この“真の知性”が重要なんですね。

なぜなら、
人生には、正解が用意された問題などなく、
常に正解のない問題の連続だからです。



ところが現代人は、「頭でっかち」な傾向が強いと言われますが、

これはつまり、
一つの正解が用意された問題を正しく解く力ばかりを鍛えて、
生きていく上で本当に大切な「真の知性」が弱くなっている
ということだと思うんです。



「頭でっかち」ということは理性にかたより過ぎているということ
だと思います。

理性というのは、
合理的で論理的にしか考えることができませんから、

「矛盾を矛盾のまま抱える」なんていう不安定な状態が
我慢できないんです。

そこで、矛盾を解決する答を早く見つけ出して、
割り切ってしまおうとする。



「割り切りとは魂の弱さである」

これは、やはり田坂さんがよく紹介される言葉ですが、
亀井勝一郎が言った言葉です。



安易に割り切るのではなく、

どこまでも自分の中の矛盾や葛藤と向き合い、
どこまでも問い続けていく。

これこそが真の知性なんですね。

<追記:人をサポートするとき何が一番大切か?>
本日、
「人をサポートするとき何が一番大切か?」というタイトルで、
メールマガジンを発行しました。
こちらも合わせて読んでいただくと、
「自立&創造型」の生き方について、
より深く理解していただけるものと思います。
 → 本日のメルマガ記事






procoach at 16:27│Comments(10)clip!

この記事へのコメント

1. Posted by 志賀 実樹也   2012年02月09日 20:20
5 野口さんへ

はじめまして。
トラウマを専門に扱うカウンセラーをしている
志賀と申します。

メールマガジンのリンクから来ました。

メルマガの
「人をサポートするとき何が一番大切か?」
という記事と、今回のブログの記事を読んで

野口さんの
人に対する深い思いやりと
生きていくことに対しての厳しい倫理観
のようなものを感じました。

心を扱う仕事をする者にとって
背筋が伸びる思いです。


私が人生の解決策を求めようとする時
いつも自分に問うことは

・そもそもなぜ解決策を求めるのか?
・今、一番避けたい事は何か?
・なぜそれほどまでに避けたいのか?
・その前提になっているものは何か?
・自分はどう在るべきだと思っているのか?
・なぜそう在るべきなのか?

それはまさに野口さんがブログの記事の中で書いた
真剣に人(自分)に向き合うことなのだと思います。

もっとも避けたいことの中に
もっとも求めていたものが在る

私がこれまで得た気づきから感じたことです。


そして人の成長を考えた時

ちゃんと依存できた人は
ちゃんと自立できるようになり

ちゃんと認められた人は
ちゃんと認めることができるようになる

のだと思っています。


人に依存したがりで認められたがりの私は

ちゃんと依存できるものを観つめ
ちゃんと認めてくれているものの声を聴きながら

少しずつ成長していこうと2つの記事を読んで
あらためて思いました。

素晴らしいメッセージに感謝しています。
これからも楽しみにしています。

トラウマカウンセラー
志賀 実樹也
2. Posted by 山中一弘   2012年02月10日 05:17
大切なことなのに、
実際にトラブルの渦中になると忘れてしまいます。


>B君との人間関係をよくするために、
>どれだけ時間をかけて、自分で悩んだか?

>B君とコミュニケーションを取るために、
>どれだけ勇気をふるって体当たりしていったか?

>B君との関係で悩むことによって、
>自分が上司としてどれだけ成長しつつあるか?


日常から、上記を意識して人と触れあおうと思いました。

相手にどうなって欲しいかではなくて、
自分が相手とどういう関係を築きたいのか、
ですよね。本当に。

野口さんいつもありがとうございます。


3. Posted by 嘉代子   2012年02月10日 07:23
とても共感します。

表層はきっかけをくれますが
本質に気づくには 内なる自分との出会いだと
想います。  

随分探しましたが 
この理解が深まるにつれ
自己を大切にする気持ちが高まり
同時に周囲の変容にも驚いています。

素晴らしいメッセージを
ありがとうございます。
4. Posted by きのみい   2012年02月10日 16:30
こんにちは*^ ^*
コメントは初めましてかも知れません。
メルマガのリンクから来ました。

メルマガと共に
とても考えさせられた記事でしたので
ブログで紹介させて頂きましたm(_ _)m
5. Posted by Maygreen   2012年02月11日 08:08
野口さん。 

「自立&創造的生き方」シリーズ。
書き写しながら読みました。

「自分の人生を切り開くための答えは自分の中にある」
と認めると


「相手の人生を切り開くための答えは相手の中にある」
と信じることができるのかな。

と。感じました。
相手の人生を切り開くための答えは私にはわからない。
ならば、自分の人生を切り開くための答えはみつからないかもしれないけれど 矛盾を矛盾としてそのまま抱えて 自分と向き合い、自分にココロを開き、本音のコミュニケーションを交わしていく。


正解なんて 無くてよいのですね。
自分で見つめていることこそが、幸せ♪♪♪

を感じられました♪

まさしく 宇宙の入れ子構造。 
内側がひっくり返って 外側になったりして
それを繰り返して みんな一緒♪

まずは「自分のできること」
「自分をハッピー」で保てたら
「あなたのハッピー」 が保てるかも♪

少しずつ 幸せが増えたらいいなぁ。
と 朝陽のキラキラのなかで 思えました。

野口さんのおかげで 感動してます。
ありがとうございます。

むちゃくちゃだけど、これでいいのだ〜〜。



6. Posted by M.I   2012年02月13日 14:43
こんにちは。

昨年より、野口さんの「3ヵ月チャレンジ」の貴稿を読ませていただいていたM.Iと申します。

これまで、自分が現在チャレンジしている目標が少しでも早く現実となるように、また現実になったときに継続していける実力がついていることを願って、学びの実践のほかにさまざまな自分自身を鍛える模索をしてきました。その中で、どうやら必要不可欠ではないかと感じ取ったスキル(という言い方が正しいかどうかわかりませんが)の一つに、「自立心」がありました。

「3ヵ月チャレンジ」との出会いは、良い師にも、家族にも恵まれたけれども、ここからはどうしても一人で歩いていかなくてはならない。(どうしようか)と考えていたまさに最中でした。夫との休日以外の日に、毎日、心強いコーチもしくは尊敬する知人に対面する気持ちで一稿ずつ読ませていただきました。その作業が、先週で終わった今日という週明けの日に、(不思議なことなのですが初めて)最新の更新である今日の貴コラムにたどり着くことができました。

これまで、大へん示唆にみちた言葉やご本を数々ご案内くださり、敬意とともに感謝申しあげます。今後も、ときどき拝見させていただきたいと思っております。

野口様のこれからの一そうのご清栄を心からお祈りしております。
本当にありがとうございました。

  M.I
7. Posted by ポヨ人・めちゃくちゃ思考三昧   2012年02月13日 22:28
5 確かに、難しいですよねm(_ _)m出る杭は打たれますしね。みんながやってるとか言われて、そのくだらいみんなとか言う日本みんな党が自分を幻滅させますm(_ _)m群れて行動して粋がったり、迷惑かけて、迷惑かけるのに理由つけてこうどうする日本反社会力みんな暴走任侠党も、結局は力が強いかもしれないけど、やっぱ幻滅します!結局今の自分の信条は、ひとりで苦しいけど信念やら思想やらで無限大の行動で生きてる人間に最終的に嫉妬します!いい意味で、そこにはその人なりの絶望と希望の矛盾が入り交じってるから、社会に対しての生き方が、時に槍であり、時に盾であり、それがなにかしらの行動である人がいたら、それこそかっこいいポヨジンです(_ _)答えは紙に書いて捨てちまえばいい、点数なんて決められる覚えはないし!0って数字も100より難しい数字ですしね!では
8. Posted by 藤本みゆき   2012年02月26日 16:21
5 野口さん、いつも素晴らしいメッセージを、有り難うございます♪

私も、カウンセリングをしていると、多々、お話しのような質問を受けることがあります(^^;

そんな時、やはり同じように、その方の状態、有り様(ありよう)のお話をさせていただいています。

答えを求めてくる『ナゼナゼ坊や(お嬢様)』〜敬意を込めてそう呼ばせていただいています( ̄▽ ̄;)にとっては、いつも、答え(結果)のみが大切で、その対人関係での、プロセスや、自分自身の理解のプロセスに、あまり興味をむけていません(^-^;
そこで起きている表面的な問題の解決策と正しい答えが欲しいのでしょうが、それが、『依存的』な状態であることにも、気づけないことが、多々あるようです(..)

野口さんのお話を読ませていただいて、この依存性が日本人に多いとのこと、とても共感しました。

今は、そんな、『ナゼナゼさん』たちに、自発性を持って自分自身の有り様に意識を向けていただけるように、関わらせていただいています(*^^*)

まあ、このプロセスは、私にとっても、『忍耐』を学ばせていただくよい機会を与えていただいてます(^o^;)

野口さんのお話は、私にとって、シンパシーだらけで、とても嬉しいです♪

本当に、いつも、有り難うございます(*^^*)
9. Posted by リリィ♪   2012年03月11日 09:11
人生からの問いかけを
どのように受け止めるかも、
その答えも
自分自身の中にある、
そう思いつつも、
同時に
他者からの言葉に
耳を傾けられる
素直さを大切にしたいと思います。
ありがとうございます。
10. Posted by shige   2012年03月11日 23:09
まずは自分の在り方。心にしみます。

自分はまだまだ未熟です。

人生の矛盾に、正解の無い問いに、
一生むきあっていける大きな自分を目指して、
日々、人間学を学んで行きたいと思います。

人間学は一生勉強ですね。
ゴールの無い勉強を楽しくできるのも
学友の皆さんの御蔭です。

本当にありがとうございます。

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