2011年03月20日

どんな状況でも実現できる価値


ヴィクトール・E・フランクルによると、
人間が人生において実現できる価値は3つあります。



1つ目は「創造価値」。
これは、何かを創り出すことによって実現される価値のことです。
仕事や芸術作品の創作などがこれにあたります。

2つ目は「体験価値」。
これは、何かを体験することによって実現される価値のことです。
芸術作品を鑑賞したり、自然の美しさに感動したりすることが、
これにあたります。



ユダヤ人であったフランクルは、ナチスの強制収容所に送還され、
人間の尊厳を奪われるような、筆舌に尽くしがたい仕打ちを受けました。

名前ではなく番号で呼ばれ、罵られ、叩かれ、蹴られ、
そして動けなくなるまで重労働をさせられました。

創造的な活動をすること(=創造価値)も、
人間らしい喜びや楽しみを体験すること(=体験価値)も、
実現不可能な状況でした。



しかし、そこでフランクルは、
このような状況でも実現できる“究極の価値”を見出したのです。




それが、3つ目の「態度価値」です。

これは、自分に与えられた状況や運命に対してどんな態度を取るのか。
その態度によって実現できる価値です。

強制収容所という過酷な環境の中にあっても、
「この状況をどうとらえるか」という態度は自分で選択できるのです。



実際、収容所という過酷な環境の中で、
獣のようになっていった者もいれば、
人間らしい尊厳のある態度を取り続けた者もいました。

自分のことしか考えない“エゴの塊”のような人間もいれば、
自分が空腹であるにもかかわらず、死にそうな仲間に自分のパンを分け
与える者もいたのです。

後者は、まさに態度価値を実現した人ですね。



自分の置かれた状況をどうとらえ、どう行動するのか。

それによって僕たちは、態度価値を実現し、
人生を価値に満ちたものにすることができるのです。



フランクルによると、

ロゴス(=宇宙の力、神)は、僕たち人間がどんな態度で生きるのかを、
期待しながら見守ってくれている。
そして、僕たちの取った態度や行動は、この宇宙に永遠に保存される。



さて、この度の東日本大震災において、
被災地における日本人の態度の素晴らしさに、
世界各国のメディアが驚きと称賛の報道をしています。

世界の多くの国々では、
天災の直後には、群衆による略奪や暴動が起きていますが、

今回の東日本大震災において、
水も食料もない厳しい寒さの中で、
人々は礼儀と節度を失わず、きちんと列に並び、
譲り合い、助け合っています。
群衆による略奪や暴動の話はほとんど聞きません。

これは海外の感覚からすると、
驚くべきことであり、称賛に値することなのです。



米紙ウォール・ストリートジャーナルは、
「不屈の日本」 というタイトルの社説を載せ、

CNNの専門家は、
「日本の国民はミラクルだ。他国だったら数倍の被害になって
いただろう」 と話し、

また、ロシアのインターネットサイトでは、
「日本人には、苦難に立ち向かう力がある」 などの声が相次ぎ、

さらに、いつもは日本に批判的な中国メディアさえも
「日本人の冷静さに世界が感心」(環球時報) と称えました。



被災された方たちの示される態度価値によって、
世界の人たちが感銘を受けているのです。



僕も、被災された方たちの姿を見て、
たくさんの勇気をいただいています。



態度価値を実践・実現することは、
自らの人間としての尊厳を体現し、自らの人生の価値を高めるだけでなく、
周りの人たちにも大きな影響を与えるのですね。




<震災関連の情報>

赤十字の義援金受付

赤十字の献血

・安否確認のシステム
 NHKオンラインの安否情報検索
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この記事へのコメント

1. Posted by 山中一弘   2011年03月21日 00:25
日本人を賞賛してくださっている世界の皆さまに、
感謝をしたい気持ちが溢れてきます。

2005年の3月に野口さんが書かれた記事でもあるように、
プラスのレッテルを貼ってくださる皆さまの「言葉の力」できっと、
日本人全体の気質はますます高まっていきますね。

僕もそんな言葉に応えるべく今まで以上に
礼節をもって謙虚に日々生きたいと思いました。


フランクル博士の言うように、
この人生の意味を問うのではなく、
人生から問われているのだと考えると、

「いま、この状況、果たして君はどう立ち向かうのか?」

そんなふうに、フランクル先生に問われている気がして、
その答えを探しています。


野口さん、いつもありがとうございます。

2. Posted by じゅんこアーティスト   2011年03月21日 08:18
4 大規模な電力制限が行なわれるとのニュースが流れた夕方、
帰れなくなる!とあせった私は、駅に走り、少しでも先の
駅に行く電車にのりかえ、すでに超満員の電車にムリに乗
り込みました。

私が悪いわけですけど、すでに乗れていた女性2人からは、
冷たい言葉を受けました。電車のドアがしまり、乗れずに
列をつくっていた一番前のおじさんは(私の強引さに)笑っ
ていました。(動きだした電車から、その人にVサインを
出したかったです…。すいません)

電車内にいた女性と、どうしても電車に乗ろうとしている
人の立場が逆だったら、自分はどうしただろうと、ぎゅう
ぎゅうずめの中で考えていました。そういう非常時に、人
の性格がでてしまうのではないか、と感じました。
3. Posted by ぴろきち   2011年03月21日 09:22
野口さん。

いつも大切な気づきをありがとうございます。
今こそ態度価値の実践なんですね。

野口さんのブログを紹介させて頂きました。
ありがとうございます。
4. Posted by 田中伸一   2011年03月21日 16:50
5 私もこの状況は、態度価値を実践できる状況だと思っています。
そして、今、多くの人が「愛」をベースにした態度価値を実践していると思っています。
5. Posted by ゆうたん   2011年03月24日 10:55
5 ロゴス…人格の深みを形づくるものは、見えないところにあってその人を支える応答の対象です!
とかく、小さなことに敏感に反応し感情的になりやすい私ですが、
一呼吸間を置く、あるいは、高い視点を持つことの重要性を感じています。
6. Posted by かまちゃん   2011年03月26日 23:36
5 態度価値について野口さんから教えていただいて以来、態度価値を実践することを意識してきました。

この度の大震災で、ご両親と音信不通になり不安でありながら、何日も一緒に会社に泊まりこんで、復旧業務にあたられた同僚がいます。

残念ながら、その方のご両親は津波で亡くなられましたが、どんな状況においても、自分のやるべきこと、やらなければならないことに使命感を持って取り組んだ姿勢に頭が下がります。

同僚から素晴らしい態度価値を教わりました。
7. Posted by 金 東 弘(ひろし)   2011年04月19日 14:09
こんにちは.
私は韓国人です
日本人友達に先生お話を
聞いて入って来るようになりました
よろしくお願いします
8. Posted by ジョー三軒家   2011年09月03日 16:28
5 野口嘉則さん、いつも素敵な話しをありがとうございます。「夜と霧」は先週に読了したばかりです。
「私は、私の苦悩にふさわしくなくなることだけを恐れ た」
「苦しみは、何かを成し遂げるためにあるのではないだ ろうか」
「生きることから何を期待するかではなく………生きる ことが私たちから何を期待するかが問題」
ニーチェ 
「私を殺さないものは、私を一層強くさせる」
交通事故で生死を彷徨い寝た切りの人生になってから「運命や人生」について考えるようになりました。
絶体絶命の状況に置かれた人間の心理を学ぶ為に「夜と霧」をよみました。
どの本を読んでも、その中のいくつかの文章に全てが集約されていることに気づきます。
それは読む人にとって必要としている問いに対する答えのようにも思いえます。「求めれば与えられる」
「鏡の法則」も他の法則類も「夜と霧」と繋がっているのに気づいたのは私だけでしょうか?
その後にエリ・ヴィーゼルの「夜・夜明け・昼」を読みました。様々な生き方がありますが、その全てが自分なのだと思います。
9. Posted by satomi(herb soap)   2011年09月17日 03:27
野口さん

今更ながら、このサイトを知りました。

勝手ながら、私の未熟なブログにも紹介させていただきました。


ありがとうございます。
10. Posted by リリィ♪   2012年03月08日 20:14
野口さん、ありがとうございます。

1年前の東日本大震災時、
私も電車の中に閉じ込められました。

しかしながら、
見知らぬ一度同士の中で
自然と助け合いがおこり、
避難する時も、
お先にどうぞ、と
自然に譲り合っていました。
皆さまの態度に
感心したことを覚えています。
11. Posted by shige   2012年03月08日 23:27
震災にあわれた皆さんの態度価値は素晴らしいものだっと思います。

心から見習いたいです。

日頃から態度価値を意識して心がけていくことが
緊急時での態度価値を向上させてくれるんだと思います。

僕もがんばります。ありがとうございます。



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