2005年02月25日

「対立」から「解決策」を創造するファシリテーション(2)

意見が対立した時に、勝つか負けるかではなくて、双方が満足できる結論
を探す方法がある(=ウィン・ウィン)ことを、昨日紹介しましたね。


今日は、ウィン・ウィンの結論を出すためのプロセスを考えてみましょう。
ある新婚夫婦の会話の例で考えてみます。

休日の前日に、1台の自家用車をめぐって対立が生じています。

夫「明日は、僕は課長(上司)の新居に行くんだ。課長は家を建てたばか
  りで、課のメンバーが全員招待されてるんだ。だから車を使うよ。」

妻「ちょっと待ってよ。私はデパートに行く予定なの。だから車は私が使
  いたいの。」

夫「デパートなら電車でも行けるだろう。僕はお祝いに観葉植物を持って
  行くから車がいいんだ。」

妻「私はいろいろ買い物する予定だから、帰りは荷物でいっぱいになるわ。
  それ持って電車やバスにのるのはイヤよ。」

さて、ここからウィン・ウィンに持っていくためには、どうすればいいで
しょうか?
あなただったら、どうしますか?

まず一番大切なことは、勝つか負けるかというパラダイムから脱して、
「おたがいが満足できる結論を探そう!」とコミットすることが
大切です。

つまり相手を「敵」と見なすのではなく、「創造的な解決策をいっしょに
探す味方」として考えるのです。


次に「問題点は何かを明確にする」ことが大切です。
問題をどのように定義するかで、解決の方向性が決まってくるからです。

そのためには、おたがいの欲求を明確にしていくことがポイントです。

夫と妻の欲求を、それぞれ「自分が車を使うこと」と捉えてしまうと、ど
ちらかの欲求が満たされないことになるので、争いが始まります。

そこで、真の欲求を探っていきます。

例えば、夫の真の欲求は、
「観葉植物を持って電車に乗りたくない。車で運びたい。」ということと、
「自分の自慢の車を、車好きな課長さんに見せたい」ということだったと
します。

そして、妻の真の欲求は、
「買い物した荷物を持って電車に乗りたくない。車に載せて帰りたい。」
ということだったとします。

ここが明確になると、双方を満足させるアイディアが出やすくなります。


次のステップはブレイン・ストーミングでアイディアをたくさん出す
段階です。

ブレイン・ストーミングの4つのルールに沿ってやることが大切です。

(1)批判厳禁=他人の出したアイディアを批判したり評価したりしない
        (評価は、次のステップに移ってからやります)

(2)自由奔放=突飛なアイディアや非現実的なアイディアもOK!

(3)質より量=「いいアイディア」を出そうとすると自由な発想が湧き
        にくくなるので、数多くアイディアを出すようにする

(4)便乗する=他人のアイディアに便乗するのもOK!

ゲーム感覚で、自由なアイディアを数多く出していくことが大切です。
ブレイン・ストーミングを考案したアレックス・オズボーン氏は「立ち止
まるな(ひらめくまで待つな)」と言っています。

この夫婦の場合で例を挙げてみると・・・

・課長への贈りものを、観葉植物以外の、持って行きやすい物に変えて、
 妻が車を使う

・妻が買い物に行く日を別の日にして、夫が車を使う

・妻が夫を課長さんの家に送って、その後、妻は車でデパートに行く

・夫が車を使い、妻はデパートからの帰りにタクシーを使う

・妻が車を使い、夫は課のメンバーの誰かに、車で迎えに来てもらう

・妻は車のある友人といっしょに買い物にいき、夫が車を使う

・夫が車を使い、夫は帰りにデパートで妻と待ち合わせ、車でいっしょに
 帰る

・課長さんはじめ、課のメンバーも買い物に誘い、いっしょにデパートに
 繰り出す(笑)

などなど・・・


そして、次のステップは、出てきたアイディアを評価する段階です。
一つ一つのアイディアが、「実行可能か?」「双方の欲求を満たすか?」
を評価していくのです。

そして最善の解決策を選びます。

この夫婦の場合、例えば、「妻が夫を課長さん宅に送っていき、その後、
車でデパートに行く」を選ぶかもしれません。
この方法だと、夫は観葉植物を車で運べた上に、自慢の車を課長さんに見
せることもできます。(ついでに自慢の妻も?)
そして、妻も買い物した荷物を車に載せて帰ることができます。


今日は夫婦間の例で説明しましたが、ビジネスの現場にもそのまま応用で
きます。
ぜひ、今日紹介した手順で実践してみてください。

このような問題解決法を体系的に習得するのに、親業訓練講座というコミ
ュニケーションのトレーニングがおすすめです。
私は、親業訓練一般講座というのと親業訓練パート2講座というのを受講
したことがありますが、とても実践的にコミュニケーションを学べます。

親業では、上記のような問題解決法を「勝負なし法」として体系化してあり
ます。
「勝ち」「負け」の他の第3の方法なので「第三法」とも呼ばれています。

ご参考までに、親業訓練協会のHPもご紹介します。
http://www.oyagyo.or.jp/menu.php


<おすすめ本>

今日は、まず親業の基本的な本を紹介します。

親業―子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方


続いて、創造的な発想力を高めるのにおすすめの本です。
「クレージー・ブレインストーミング」「アフィニティ・ダイヤグラム」
「アサンプション・スマッシング」「トヨタ式5W1H」など、様々な発
想法が紹介してあります。

クリエイティブ・シンキング―創造的発想力を鍛える20のツールとヒント


そして、ブレイン・ストーミング関連でイチオシの本です。
ブレインストーミングをフルに活用して世界中の注目を集める会社に成長
したIDEOを紹介する本です。
第4章の「究極のブレイン・ストーミング」と第5章の「クールな企業に
はホットなグループが必要だ」は必読ものです。

発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法

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  今日もひと押しお願いします!(↑)        野口


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この記事へのコメント

1. Posted by dera_でら   2005年02月26日 02:13
初めまして。

偶然たどり着いたのですが、すごくわかりやすく「コーチング」についてかかれておりましたので読ませて頂きました。

win*win の関係は どんな状況でも作りたいです。
特に夫婦間では win*lose の関係にすぐなってしまいます。(勿論「負け」は自分です(笑))

これからも勉強に来ますので、よろしくお願いします。
2. Posted by alchemist2039   2005年02月26日 06:44
先日は突然、ブログの紹介にコメントさせていただき大変失礼しました。
それにもかかわらず、野口さんの暖かいコメント感謝いたします。
ありがとうございました。

win-winの関係はビジネス、交渉、人間関係でとても重要ですよね。
A or B ではなくて、AもBもアリだということですね。
「ついでに自慢の妻も?」 思わず笑ってしまいました。

これからも、勉強させていただきます。



3. Posted by 大金   2005年02月26日 11:00
野口コーチ。こんにちは。

こんな時に私だったら、迷わずオクサマに車をお使いいただきます。

オクサマに気持ち良く車を使ってもらえれば、晩飯の時にビールを1本、余分に貰えるかもしれないし・・・(笑

これってwin=win?



4. Posted by Supporter 藤井   2005年02月26日 15:13
野口様
いつもお世話になります。
今回の Win Win の考えかたは,TOC(制約条件理論)の思考プロセスに通じますね。
対立,矛盾をいかに双方の納得のうえ解決できるか・・・。
今の私の経営サポート姿勢として, Win Win 更にWin,場合によってはもっと更にWin,つまり関係者全てがWinとなることを目指しています。
5. Posted by 野口嘉則   2005年02月27日 00:06
でらさん
はじめまして。
書き込み嬉しいです。
また、遊びに来てくださいね。

alchemistさん
笑ってもらえてハッピーです。
「AもBもアリ」という表現、分かりやすいですね。

大金さん
迷わずオクサマに譲られるとは・・・、さすが!
それとも、ビールの決定権をオクサマが握られているとか?(笑)

藤井さん
TOCの目指す「ゴール」は、まさにWin Winの状態なんでしょうね。
TOCの本を読んだ時に「対立解消図」が出てきましたが、あれも、
「対立から解決策を創造する優れた手法」だと思いました。
TOCについては、機会があったら詳しく教えてほしいです!
6. Posted by うえだ まさし   2005年02月27日 18:29
こんにちは。お久しぶりです。
うえだ@CTP受講中です。

当方現在、夫婦喧嘩の真っ只中です。
我が家は喧嘩といっても、冷戦が続きます。

しかも、今回のお題に近い、車の購入からいろいろ派生して
現在に至ります。
コーチング勉強中、クライアントもいるんですけど、こんな感じです。

非常に参考になりました。
ありがとうございました。
7. Posted by 野口嘉則   2005年02月28日 22:40
うえださん
奥様と冷戦中なんですね。
今回の記事がご参考になったとのこと、嬉しいです。
「私も家庭内でもっと実践しなきゃいかん!」と思いながら記事を書きました。
8. Posted by ジッポ   2005年03月06日 02:19
野口コーチ
TB、コメントをありがとうございました!
コーチング、僕もとても興味がありますので、
是非、勉強させていただきます!

Win-Winの関係、
いいですね(^^)
スタート時点でお互いがルールにコンセンサスを得て、
Win-Winの関係になるゴールにコミットメントをすることが
大切だと思いました。

また、学びに寄らせていただきます。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
9. Posted by 野口嘉則   2005年03月06日 10:19
ジッポさん
コメントありがとうございます。
ジッポさんのブログ、とても勉強になります。
今後もよろしくお願いします。
10. Posted by 西木 裕司   2005年06月06日 13:42
ほとんどのもは浮かびましたが最後の「課長さんはじめ、課のメンバーも買い物に誘い、いっしょにデパートに繰り出す(笑)」これは浮かびませんでした。
11. Posted by み〜ぶ〜   2007年02月19日 21:25
野口さん、
一日、一記事にしようと思いながら、やはり読んでます(^_^;)
「親業」ズシンとくるネーミングですね。
ずっと、真の欲求を探らずに、過ごしてしまっています。子どもが思春期を迎える前に気がついてよかったです。あとは、実践をがんばります。
それから、「ひらめくまで待つな」なかなかいいですね。
野口さん、今日もありがとうございました☆。

12. Posted by みぱ   2007年04月20日 22:33
>相手を「敵」と見なすのではなく、「創造的な解決策をいっしょに
探す味方」

いい言葉ですね。
そこがしっかりと全員に根付くことができれば、その後の
問題点を明確にする
アイディアを出し合う
アイディアを評価する
の流れは、手法さえわかっていればスムーズにできそうな気がします。

みんなで目的をはっきりと見定めて
よい会議・楽しい話し合いをしていきたいと思います。
13. Posted by aoiumiaruku-v.v   2007年05月18日 02:08
私は・・・
耳慣れないカタカナ文字の意味はよくわかりません。
勉強不足なのです。
ただ、
【わたしはOK。あなたもOK。】
考え方で、コミュニケーションしよう!
ということはよくわかります。

「本当は、(敵)はどこにもいない。
 自分のこころに自分で作り出すだけ。」

まずはわかることから、
  日々実践していかなければ、始まりません。
14. Posted by michiko   2007年06月14日 00:23
私の場合、自分の要望を満たすことが目的でなくて自分の意見を通すことが目的になってしまっているからいつまでもウィン・ウィンの精神で話ができないでいるのではないかと記事を読んで思いました。

今度からはまずお互いの要望を明確にして、どのようにしたらお互いの要望を活かすことができるのか考えてみようと思います。
15. Posted by マーガレット   2008年04月04日 20:56
野口さん、こんばんは。
真の欲求を明確にすることを素通りしているような気がします。
表情や動作には出ているかもしれませんが、言葉にしないから「戦い」が起きるのです(ね?)
「おたがいが満足できる結論を探そう」
たとえ、毎回すぐには、見つからなくても「真」を探す気持ちを持っていたいと思います。
「ウィン・ウィン」も、愛ですね。
考え方のステップを忘れそうになったら、今日のお話を思い出します。
野口さんの20代の頃からの読書の量のことも、たくさんの講座を受講されていることなどなど・・「すごいな〜」の連続です。(ご飯を食べる時間はあったのでしょうか。。)
こんなに出し惜しみすることなく分け与えてもらって、心から感謝しています。
いつもありがとうございます☆
16. Posted by あきたん   2008年04月05日 22:39
とにかくアイデアをたくさん出す。。。というのが、難しいかな。頭をやわらかくしないと。

記事を読みながら自分でも考えてはみたのですが、3つ思いつくくらいがせいぜい。

「欲求」を明確にしたら、両方のそれさえ満たせればあとは何でもあり!という観点で、できるだけたくさん・・・と思っても、これは練習が必要な感じです。
楽にできる人もいらっしゃるんでしょうけど・・・。
自分の頭の固さを痛感してしまいました(笑)
17. Posted by リリィ♪   2011年02月25日 09:52
勝負なし法、創造的コミュニケーション、
繰り返し実践あるのみ、ですね。
今日もありがとうございます。
18. Posted by shige   2011年02月26日 00:09
6月の電話会議を思い出しました。

勝負なし法、第一段階の要求の明確化が
ポイントだというお話が、野口さんからありましたよね。

明確になったところで、ブレイン・ストーミング。
実践したことはないのですが、皆さんのお話を聞くと
やはり素晴らしい方法なんですね。

今日も勉強になります。

19. Posted by na7me7   2011年03月03日 06:55
トコチャレに少し遅れながら参加していますが、
みなさんのコメントを読みながら、ゆっくりと自分のペースで
学ぶ楽しさも感じています(^^♪

>>相手を「敵」と見なすのではなく、
「創造的な解決策をいっしょに探す味方」

とても響きました。
意見交換をする時は、いつも意識したいです。

今後は、ブレイン・ストーミングでアイディアをたくさん出しながら
最善の解決策を選び、双方が心から納得するような
問題解決法、勝負なし法をもっと学んで実践したいと思います。
20. Posted by 気功士:アーナンダ   2012年01月18日 16:23
真の欲求を忘れがちになることがあります。

特に
インターネット等をやっていると
流されてしまうことが多い。

アイデアを数だしてから
評価。

忘れずに忘れずに。

いつもありがとうございます。
21. Posted by hide   2012年02月27日 09:56
こんにちは

意見が対立した時は冷静になって、
「問題点は何か」を明確にする事が
大切ですね。

今回の手法は会社の会議で実践します。

ありがとうございました。

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